スタッフ今堀です。
日本人は近視が多いと言われておりますが、実は遠視の人も結構います。
近視は視力が悪くなるので気が付きやすいのですが、遠視の場合は視力が良いことも多いので、自分が遠視だと気が付かずに生活されている方も多いです。
当店のスタッフ長尾も遠視なのですが、ずっと視力が良かったので若い頃は全然気が付かなかったそうです。
眼鏡店で働くようになり、度数を測定してみたら遠視だと分かったため、遠視用のメガネを掛けるようになりました。

本当は遠視の人もメガネを掛けた方が良いのですが、先ほどもお話した通り、遠視の人は視力が良いことが多いので、
「視力が良い(ちゃんと見えている)のになんでメガネを掛けなければいけないの?」
そんな風に思われる方も多いです。
今日はその理由についてなるべく簡単にお話ししたいと思います。

まずは目についてのおさらいです。
目に入ってくる光は、角膜と水晶体によって屈折させられます。
この時、うまい具合に網膜に焦点を結べば良いのですが、網膜の手前で焦点を結んでしまったり、逆に網膜より後方で焦点を結んでしまうこともあります。
このような目の屈折状態(目に入ってきた光が網膜上のどの部分で焦点を結ぶか)によって、正視、近視、遠視の3種類に分けられます。

視力測定の結果だけで近視や遠視だと判断できると思われている方も結構おられるのですが、視力測定だけでは目の屈折状態は分かりません。
屈折検査(眼鏡店の場合は度数測定)を行うことでそれが分かるようになります。
上の写真のような機器で測定をする方法と、

視力表を見てもらいながら、検眼枠のレンズを入れ替えて確認していく方法があります。
ちなみに、当店では両方の測定を組み合わせて確認しております。

正視の目は、自然に遠くを見ている(無調節)時、網膜にしっかりピントが合います。
網膜はカメラのフィルムによく例えられますが、そこに鮮明な像が映し出されるので視力も良くなります。
また、正視の目は、入って来た光が自然に網膜に焦点を結ぶので、余計な力を使わずに楽に遠くを見ることができます。

一方、遠視の目は網膜より後方でピントが合ってしまい、網膜にはピントが合っておりません。
このままだと物が鮮明に見えない(視力が悪くなる)のですが、目の中にある水晶体の厚みを変化させることでピントが合う位置を前方にずらし、網膜にピントが合うようにします。
この反応は無意識のうちに行われ、調節と呼ばれます。
目が勝手にピント合わせをしているわけです。

遠くにしっかりピントが合う正視の人でも、近くを見ると場合にはこの調節が必要となります。
遠くから近くの物へと見る対象を変えた時でも、ぼけることなく瞬時に見られると思いますが、これは目の中で調節というオートフォーカス機能が働いているからです。

調節するための力を調節力と呼び、調節力が大きいほど見たいものを目に近づけて見ることができます。
この調節力、10代の頃はすごく大きいのですが、年齢とともに衰え、40代に入ると顕著に低下します。
調節力の低下によって近くを見ている時に目が疲れやすくなったり、だんだん見づらくなるといった症状が出やすくなるのが、いわゆる老眼です。

冒頭でご説明した通り、遠視の目は調節によってピントを合わせることができるため、正視の人と同じように遠くを見た時の視力は良くなります(老眼が始まると遠くの視力も悪くなってきます)。
ただ、本来なら遠くを見る時には使わなくてもよい余計な調節力を使いながら見ています。
そのため、正視の人に比べると近くを見るための調節力の余力が少なくなってしまい、デスクワークなど近業作業が多くなると目の負担が増大します。
遠視は早く老眼になると言われたりしますが、調節力の余力が少ないことが原因で老眼の症状が出やすくなります。

遠視を補正するためのメガネを常用すると、(遠くを見た時に調節をしなくてもよくなるので)近くを見る時の調節力に余力ができます。
ちなみに、遠視用のメガネの処方箋は度数の横の符号が+(プラス)になっております。

遠視の補正にはレンズはプラス(凸)レンズが使われます。
近視用の補正レンズとは逆で、端が薄くて真ん中が膨らんだレンズとなり、虫眼鏡のように対象物が大きく見えます。
プラスレンズは老眼鏡にも使われるレンズで、先ほどの処方箋の画像にあった+2.00Dの遠視の人の場合、銀行などに置いてある既製品の老眼鏡の+2.00Dを使うことで遠視が補正できます。
※先ほどの処方箋の例では乱視もあるので、厳密には遠視とは別に乱視を補正する度数も必要となります。

余談ですが、もしその人が老眼世代になっており、+2.00Dの老眼度数が必要だった場合、老眼鏡の度数はどうなるのでしょうか?
まず、遠くを見る時用に+2.00Dの度数が必要になります(これで正視の人と同じスタートラインに立てます)。
たまに「老眼鏡を掛けた方が遠くがよく見える」というご高齢の方がおられるのですが、プラスレンズが入った老眼鏡によって遠視が補正されるからです。
そして、近くを見るためにはさらに+2.00Dの度数が必要になるということなので、老眼鏡の度数は+4.00Dになってしまいます。
ちょっとややこしいかもしれませんが、要するに遠視の方が老眼鏡を作る場合、元々の遠視の分も合わせた度数が必要となるので、結構強い度数になってしまうということなのです。

遠視は遠くを見るために調節力を使い、近くの物を見るためにさらに調節力を使わなければならないので、正視や近視の目に比べて疲れやすい目とも言えます。
近視の場合は視力を補正するという目的でメガネを使いますが、遠視の場合は遠くを見ている時に調節をしなくても良いようにするというのが大きな目的になります。
裸眼でよく見えていてもメガネを掛けた方が良い理由がお分かりいただけたでしょうか?